紆余曲折

いろいろあった。

社会

 今週水曜に社会復帰した。配属先は新宿で、1年間ITの研修である。Twitterのフォロワーの新社会人は工場で研修しているみたいなので、大企業の新入社員はどこもしばらくは研修なのかもしれない。本当に大学行く意味無いな。

ITの研修を受けているので、多分将来的にはSEになる予感がする。結局情報系の行き着く先はどこもSEである。画像処理しかやっていないので、サーバやデータベースのことなんて全くわからんぞ。

今は資格試験のために試験対策講義が1ヶ月ほどみっちり組まれている。実技もあるようだが、幸い触ったことのあるソフトだったので同期と同じくらい或いはそれ以上に使えている。実技がこれならペーパーも楽そうである。



 同期は基本的に親切である。上長が紹介の時に「体調不良による1ヶ月の休み」としか説明していないのに、何から何まで世話を焼いてくれる。これが社会人というものなのか。コミュ力も高く、積極的に話し掛けてくれるのでぼっち飯の憂き目に遭うこともなかった。

上長は色々気を遣ってくれているようで、1日に1回は研修している部屋に来て声を掛けてくれる。次に何かあったらこの人に迷惑が掛かると思うと、何も無く終わりたい気持ちがある。そもそも1ヶ月遅れの新入社員を引き受ける時点で懐は深い。

そんなこんなで職場には不満は無いが、いまいち食欲が無い。妻に言ったところ「環境の変化が原因なのでは」と言われた。早いところ慣れたいものである。



 スマホでブログを書くのは辛い。早くネットの契約をしたい。でもきっと出来るのは来週なんだろうなぁ。

自衛

 世間ではGWは終わり、元の日常に戻った。ぼくも今日の午後に会社から電話があり、今週で復帰することになった。長い連休も明日で終わる。

GWはというと、主に家でゴロゴロしていた。外出は映画館と、友人の2組とご飯を食べに行ったくらいである。映画のレビューでも書こうと思ったが、観た映画のいくつかが全く面白くなかったので書く気になれなかった。公開中の映画を批評するのも気が引ける。

友人の1組は大学同期で、離職経験のある人たちだった。1ヵ月休みがあっても暇で暇でしょうがないといった話をした。娘への贈り物を貰い、人間の暖かさにも触れた。写真を見せると「美人さんになるよ」と親戚のおばさんのようなセリフを言っていた。

 

 そんなわけで専ら家で過ごしていたのだが、やることと言えば映画・動画を見たりゲームをやったりと生産性の無いことしかない。田舎だもの。テレビをつけても中年アイドルグループの未成年者への犯罪をメインに報道しており、飽き飽きしている。

 ネット上でもこの事件は注目されており、たくさんの意見を目にした。今は誰でもネットで発言できる時代なので、人によって着眼点が様々で面白い。しかし、中には被害者の女子高生に対して攻撃的な文章も多くある。「ハニートラップ」「被害者ぶるな」などともう無茶苦茶である。

女子高生側に悪意があろうとなかろうと、未成年者に手を出したのならそれは犯罪である。そして犯罪行為があった時点でもう件の女子高生は被害者であり、そこに異論を挟む余地は無い。犯罪行為は100%加害者側が悪いし、今回の一件も加害者が悪い。これがこの強制わいせつ事件における多くの人の意見の前提である。

 この前提を踏まえた上で「女子高生も悪い」という意見がぼくが探した限りでは多く見られた。この「悪い」は「evil」ではなく「No Good」である。「非がある」ではなく「好ましくない」と言ってもいい。自衛の心構えが足りないということである。

夜中に中年男の家に呼ばれて行くのは自衛の心構えが欠けているし、至極真っ当な意見に思える。しかし残念ながらこの意見に言葉尻を捉えて反発している人もいる。「女子高生は被害者、男は加害者を擁護している」という意見は前提を無視している。なんて短絡的な思考回路なんだ。悲しいことにこの主張をしている人は少なくない。

数年前、インドの郊外でバイクタクシーに乗った日本人女性がバイクに乗せられたまま人気のない場所に連れられ暴行を受けた末に殺された事件がある。犯人はもちろん捕まっていないし、もう捕まらないだろう。この事件が報道されたときも同じように「日本人女性が悪い」と言う人がいて、同じように「加害者を擁護している」という人もいた。殺人犯より被害者に非があると思う人など存在するわけないだろう。文脈を読む力を付けてから、主張をするようにしてほしい。

色々検索すると、自衛が嫌いな人も数は少ないが見受けられる。「自衛しないといけない国なんておかしい」なんて意味不明な文章も見つけた。「もっときちんとセクハラを含んだ性教育をすべき」という意見もあった。残念ながらセクハラを始めとするわいせつ行為は突発的な暴力であると思う。教育や法でどうこうできるものではない。

口論の末にカッとなって人を殺してしまった、という犯罪者は殺人は罪になると知らないから罪を犯したのではない。万引き犯は、学校で万引きが悪だと教わっていないから万引きしたわけではない。諸条件が揃えば突発的な暴力・犯罪は起こりうるものであり、それは法や教育ではカバーできないだろう。だから自衛が必要なのだ。

今回の中年アイドルグループの騒動では、「夜中」「飲酒状態」「男女」「密室」「事務所の力が強い」などと条件が揃い過ぎていた。それでも部屋に向かった女子高生は自衛の心構えが足りないと言われて然るべきだろう。もっとも、未成年者なので親が止めるべきだったし、親もそういう教育をすべきだったと言える。ぼくの見解は「女子高生の親が悪い」。この「悪い」は限りなく「非がある」に近い「好ましくない」である。「業界の大御所だから断れないだろう」という意見も見たが、夜中に女子高生を家に呼ぶ大御所がのさばる業界なんて早く足を洗うべきだろう。

 

 日本だからまだいいものの、外国だと先のインドの事件のように命に関わる問題である。平和ボケし過ぎだろう。「自衛しないのが悪いという意見はおかしい」と主張する人間がいるのは日本だけではなかろうか。

GW中はテレビを付ければ中年アイドルグループが必ず映っていた。加害者の涙の会見も見苦しい。引っ越した先にはテレビはいらないかもしれない。昔はテレビコンテンツも面白かったのにな。

映画②

 昼から日を跨いで『ゴッドファーザーpartⅡ』『レディープレイヤー1』『東京喰種』の3本立てで映画を観た。前から順にDVD、劇場、WOWOW録画である。WOWOWはレンタル料すら払いたくない映画を観るのには丁度いい。観終わった今では『東京喰種』にお金を払ってもいい気はする。期待していなかった分ハードルが下がっていたのか、凄く面白く感じた。原作を読んでいたから楽しめたのかも。

 

 『ゴッドファーザーpartⅡ』は1974年に公開された映画で、マフィア映画の代表作である『ゴッドファーザー』の続編である。続編とは言っても前作の直後だけではなく、ドン・コルレオーネ(ゴットファーザー)の若かりし頃も描いている。続編映画でアカデミー賞作品賞を取った唯一の作品である。アカデミー賞自体は9部門ノミネート、6部門受賞である。凄すぎる。

ドン・コルレオーネの青年期を演じたのはロバートデニーロなのだが、本当に演技が上手い。助演男優賞を受賞したので当たり前な話なのだが、驚くほど前作のドンに似ていたのである。前作は実に2年以上前に観てストーリーもうろ覚えだったが、ロバートデニーロの演技のおかげで記憶が蘇った。独特なしわがれ声がとてもよく似ていた。ちなみに前作のドン・コルレオーネ役のマーロンブランドもアカデミー賞を主演男優賞で受賞している。

過去と現在が代わる代わる描かれる作品で、partⅡの主人公であるドンの息子と青年期のドンの対比がとても良く出来ている。特に、幼い我が子が肺炎にかかった際に自分の無力さに嘆くドンと、妻子のことは部下に丸投げする主人公の対比は結構心にきた。マフィア映画として名高い作品だが、家族愛のテーマも色濃く出ている。ラストシーンの家族からサプライズパーティを催されるドンと、お金に執着し過ぎて今までの家族全てを失った主人公の対比は考えさせられる。

 

 劇場で見た『レディプレイヤー1』は絶賛公開中のエンタメ映画である。元々存在すら知らなかったのだが、親に誘われたことと監督がスピルバーグだったことで観に行くことにした。舞台を簡単に説明すると、『サマーウォーズ』のVRバージョンで『サマーウォーズ』よろしく仮想世界と現実世界が代わる代わる描かれる。物語は仮想世界創設者が、仮想世界内にお宝を隠したのでそれを探すゲームに参加するといった感じである。

作中にはゲームや映画のキャラクターやオマージュがふんだんに取り込まれている。日本のものでいうとメカゴジラガンダムが出てきた。ゲームはOverWatchMineCraftファミコンなどが、映画はシャイニング、市民ケーンキングコングなど時代・ジャンルが様々である。全ての元ネタを知っている人はよほどポップカルチャーに詳しいだろう。

SNSで色んな問題が起きている昨今の世界を風刺しているのか「仮想世界では本名を言うな」や「ここは仮想世界だ、アバターだけを見て恋するんじゃない」などのセリフが数多くあってクスリときた。主人公が女キャラに惚れたとき際、仮想世界での友人に「相手は140キロあるかもしれないし、そもそも男かもしれないぞ」と言われるシーンは全国のオタクに見せるべきだろう。

劇中に何回か出てくるセリフの「現実世界を大切に」というのは、この映画で伝えたいメッセージなのだろう。作中でVRメガネを付けて現実世界の街中を走り回る人々を滑稽に描いているのも風刺が効いている。ニュースで見た「ポケモンGO」をしながら町を彷徨う人たちと同じだったからだ。

やはり公開当時の情勢がわかっていた方が、映画は楽しめるとつくづく思った。正直『ゴッドファーザーpartⅡ』よりも楽しめた。GWに暇な人は、デートで行くには丁度いい映画でおススメである。最も、デートに行くような人は暇ではないのかもしれないが。

 

 『東京喰種』は昨年公開された映画で、同名の漫画を原作としている。人間を食料としながら人間と全く同じ外見をしている「喰種」という生き物になってしまった元人間の主人公の悲劇を描く物語である。喰種には特殊な能力を各人が扱うのだが、それらはCGで表現されていた。また、原作では戦闘シーンが多いため、映画でもアクションシーンが数多くある。

漫画原作の多くは失敗している。目に見えて成功しているのは『DEATH NOTE』と『銀魂』あとは『ちはやふる』くらいではなかろうか。とりあえず戦闘物の漫画は軒並み失敗している。『東京喰種』の興行収入はどれほどかわからないが。失敗の原因はアクション・CGのショボさと配役であろう。

『東京喰種』は僕の目から見ると最低限のラインはクリアしていた気がする。主演の窪田正孝は上手いし、子役の桜田ひよりも上手い。CGは武器だけなので無理なく表現できており、アクションも悪くはなかった。ストーリー自体は漫画が評価されていることもあり、良い出来栄えだったように思える。少なくとも『るろうに剣心』より好きである。

残念だったのが主人公が身バレを防ぐためにマスクを着けているので、戦闘中はセリフが聞き取りにくいことである。主人公の「僕を人殺しにさせないでくれ」という結構好きなシーンでのセリフがいまいち聞き取れなかった。窪田正孝と主人公が上手くマッチしていただけ惜しかった。ちなみに原作で一番好きなセリフは「言葉を綺麗というあなたの感覚が私にはとても新鮮だった」。

映画①

 1971年に公開された『時計仕掛けのオレンジ』を見た。小栗旬主演で舞台にもなっていたらしい。大まかなストーリーはYahoo映画から抜粋しておく。「鬼才スタンリー・キューブリック監督の描く傑作SF。近未来、毎日のように暴力やセックスに明け暮れていた不良グループの首領アレックスは、ある殺人事件で仲間に裏切られ、ついに投獄させられてしまう。そこで彼は、攻撃性を絶つ洗脳の実験台に立たされるが……」。

なんといっても映像表現が凄い。今だと絶対規制されているだろう暴力・性暴力描写が沢山あった。しかしスプラッタ系の描写とは違い、ぼくが苦手な血が飛び散るシーンが無く比較的穏やかに見れた。暴力表現に穏やかはおかしいかもしれないが。

ストーリーの主軸はよくある犯罪者を洗脳するというものである。この映画が元ネタとなったか、金字塔的作品なのかは知らないがこの手のプロットは現代に溢れている。当時この映画がアカデミー賞の作品賞にノミネートされたことを鑑みると、多分元ネタの方であろう。

色んなサイトで解説されている通り、風刺的作品である。公開当時の社会情勢を全く知らないのでいまいちピンと来なかったが、管理社会への風刺なのだろう。映画にはクリエイターのメッセージがあり、それは公開時の情勢を知らないときちんと読み取れない。そういった理由で古い映画を見るのは嫌いである。ヒッチコック映画のように映像表現に凝ったものは好きだが。

管理社会への強烈な風刺よりも、ぼくが目を引いたのは狂気の表現である。主人公が「雨に唄えば」を口ずさみながら踊り、作家夫婦を襲うシーンの演出は凄かった。ナイフを舐めながら奇声を上げる殺人鬼なんかよりよっぽど狂っており、そのうえ美しかった。多分このシーンを真似た若者がいただろうと思い、検索してみると模倣犯がやっぱりいた。いつの時代も模倣犯が作品を汚す。この映画も監督が亡くなるまで、本国イギリスで公開が差し止めされていたらしい。

 

 妻が暴力表現のある映像が苦手なこともあり、この手の映画はしばらく見ていなかった。久しぶりに見るには刺激が強すぎたのか、今日レンタルショップに行った際には暴力描写の多い映画を手に取っていた。傑作というものの持つ魔力に魅了されたのかもしれない。

妻子と同居が再開されれば、暴力作品はほとんど見る機会が無い。今のうちに見ておくのが吉な気がする。しかし如何せん実家のリビングでこういった映画を見るのは気まずい。どうにかならないものか。とりあえず『パージ』と『アウトレイジ最終章』は近日中に見たい。

着地

 無事に会社との面談が終わった。「面談」というか今後の事務連絡がメインだったので「面会」の方が表現としては近い。結論から言うと、会社にはまだまだお世話になりそうである。規模が大きいと懐も深いようである。

「厳しいことを言います」という前置きから面会は始まったのだが、内容自体は温情に溢れていた。おそらく今回会社が一番伝えたかったであろうことは「希望通りの配属は叶わない」という条件である。この旨の言葉を何度も聞かされた。

既に同期は仮配属が終わっており、配属面談を受けてないぼくは所謂「余り物」の席しか残っていないとのことだった。元々就活をしていた時点で希望通りの配属になるとは微塵も思っていなかった上、特段やりたいことも無かったのでこの条件で構わなかった。ちなみに一番仲が良い同期の配属先は全く希望していないところだったらしい。ぼくとあまり変わらないのではないか。

また、理系として採用しているため、文系のスタッフ職や営業企画職に回すことは無いとも告げられた。そもそもこんな人間を営業に回すのも会社の恥だろうし、頭のいい人事部の方々はそんな愚策は取らないだろう。

 

 面会は人事部の採用部門の部長と、労働者部門の部長とその部下の方々と行った。部長2人と顔を突き合わせるのはなかなか無い経験だろう。部長のうち1人は50歳くらいの女性で、笑顔が素敵な上流階級のマダムを絵に描いたような人である。

この方とは失踪前の面談でも会っており、酷く心配してもらった。ぼくとほぼ同年齢の子供がいらっしゃるようで、その子とぼくが重なって見えたのかもしれない。今日の面会でも開口一番で「また会えて良かった」と笑顔で仰ってくれた。その後すぐにもう一人の部長から「まずは事務連絡から」と言われていたので、本心に近かったのだろうか。社交辞令であれ、家族以外に身の心配をしてもらったことは無いので少し心が温かくなった。

 

 宙ぶらりんの状態で2週間ほど過ごしていたが、無事に着地することができた。とりあえず元の人生のレールに戻ったという感じである。周りはもう出発してしまっているのだが。まぁ遅れはそのうち取り戻せるだろう。そこまで悲観することもない。

一番驚いたことは吃音症が会社にバレたのに、それに何も触れられなかったことである。ぼくが読んだネットの書き込みには、自称人事部の人間の「吃音の人間は雇いません」や「会社が把握した時点で何かしらの理由で辞めてもらう」というものがちらほら見られた。ある程度これらの書き込みを信じていたのだが、どうやら世間は違うようである。試用期間で問題行動を起こした人間のクビを切るのは簡単だろうから。

ネットの情報をはじめ、あらゆる情報には疑ってかかっているのだがこと吃音に関してはガードが甘いような気がする。というのも情報の絶対量が少ない上に、この障害に関して酷くコンプレックスを抱いているからである。弱い人間は何にでも縋るものだ。長生きしたい中高年が水素水にハマるように、オタクが声優の純潔を信じるように。

まずはコンプレックスの解消から少しずつ取り組みたい。複雑に絡まりあったイヤホンを直していくような作業である。もっと強い人間になりたいものだ。

幕間③

 ここ数日間、何にも追われずに過ごしていた。会社とは来週面談があるのでそこで今後のことは決まるのだが、その日まで本当に何もやることがない。こんなことは人生で初めてである。

今までは研究やら育児やら、何かしらやることはあった。モラトリアムと言われる大学の学部時代も、日々の糧を得るためのバイトや大学の勉強でなんだかんだ空白は埋まっていた。やるべきことが無い日々に憧れてはいたが、いざ実現してみると暇で暇で仕方がない。ニート適性はぼくには無かった。

幸い、両腕を骨折していた期間にやる予定だった部屋の掃除やゴミの処理が片付いていなかった。今後がどう転んでも実家からは離れるので、今週はこの事後処理をしていた。売却のために従弟や妻が整理していた漫画は、段ボール12箱ほどになった。こちらは2日前に集配してもらって現在査定中である。

ゲームも売れそうなものは全部売った。といっても最新のゲームはスプラトゥーン2くらいしか無く、他は何年も前に買ったPS33DSのゲームである。スプラトゥーン2を除くと、一番高かったのはぷよぷよテトリスだった。ソフトだけで総額は1万は超えていたので驚きである。ゴミにも需要はあるもんだ。

 

 こっちに戻ってからというもの、知人は1人しか会っていない。知人の多くはもう地元に残っていないということと、この最初にあった人間と当たり障りのない会話しかできなかったのが理由である。しばらくは一人でボーっとしようと思った。

ご飯を奢ってくれた友人には事の経緯を説明した。彼から返ってきたのは「どの仕事も辛いよ」である。ぼくはまだ仕事をしていない。自己嫌悪に苛まれて逃げ出したのである。多分この感覚は理解してもらえないだろうし、それで構わない。ただ彼が言葉を選びながら話しかけてくる様を見るのは心にきた。ぼくは同情される側になったのか。

彼は農学部の出身で、「農業でもやろうかなぁ」と言うと「お前には向いてない」と即答された。根拠を全く示さなかったから少しムッとなったが、暗に農業はやめとけということなのだろうか。もともとマウントを取りがちな知人なので、真意はつかめない。結局話は近況報告だけで終わり、解散となった。相手が気を遣ってくれていたのかわからないが、終始当たり障りのない会話で何も得るものはなかった。

 

 妻からはずっと「好きなようにしたらいいよ」と言われている。Webで調べると夫の失踪は離婚案件なのだが、その気は全くないらしい。それどころか資金集めのために内職を始めたという。社会人になってから知り合っていたら別れられてた気がする。学生時代に知り合ってよかった。

娘はというと、すくすく育ちもう生後4か月である。送られくる写真を見ると、赤ちゃんの顔から子供の顔へと変態していた。意志を持った目をしており、今にも何か話しだしそうである。次に会うのはいつになるかわからないが、心待ちにしている。昔と違って今は遠く離れていても子供の成長を見ることはできる。いい時代だ。

幕間②

 実家に帰ってきた。映画でも見て昼過ぎに帰ろうと思っていたが、妻から実母が興奮状態になっていると聞いて起床後すぐに帰った。実母は泣いていた。初めて親の泣いている姿を見た気がする。

「全然知らなくてごめん」と最初に言われたが、隠してたんだからわかるわけないだろう。知能指数はぼくの方が高いんだ。ぼくが隠そうと思ったら、いくら母親とはいえ超能力でも使わない限りわからないだろう。自分を責めている実母は見るだけで痛々しかった。

実母は小学校の教諭である。しかも特別支援学級の。自身の子供の悩みをわかってやれなかったのは、母親としても教師としても自分を許せなかったのだろう。なんだか申し訳ないことをしたなぁ。

 

 警察から事情聴取を受けていた中学の友人とも話した。流石10年以上付き合いのある友人である。ぼくが文系に進まなかったのを昔から疑問に思っていたらしい。知能のある人間は本質を見ているものだ。ハニートラップにも引っかから無さそうだ。いやそういうのに免疫無さそうだから逆に引っかかるのか。

その後は会社からの言伝を親から聞いていた。とりあえず今週いっぱいは休んでいいらしい。配属もぼくの希望通りのところにしてくれるそうだ。なんでそんなに良くしてくれるんだ。本当に謎過ぎる。ぼくが聞いていた「企業」は利益の出ない社員はすぐクビにするはずなのだが。

吃音に配慮してくれ、さらにこの温情である。完全に辞める気でいたのだがちょっと揺らいでしまった。幸い、来週の頭に返事をすればいいとのことなので少し考えてみることにした。

 

 会社や世話をかけた友人からは特に文句は言われなかった。人間の持つ知性の奥深さに触れた。一方、義両親は気を悪くしていたらしい。直接的に迷惑をかけたわけでは無いが実の娘である妻に心労をかけた挙句、仕事を放棄するという妻子を持つ大人としてあるまじき行為に憤りを感じたらしい。ごもっともである。

思っていたよりも周囲の人との関わり方が変わっていない。長い付き合いのある友人は障害をある程度理解していたし、それもそうか。なんだか随分と長く一人相撲を取っていた気がする。夕方に電話した妻からは頭はいいけど馬鹿と言われた。確かに馬鹿なのかもしれない。もっと賢く生きたいものだ。