紆余曲折

いろいろあった。

上京

 「いよいよ入社式!」と意気込み、地元の空港から羽田まで飛んだ。普段使わないワックスを塗り、久しぶりのコンタクトを付け、おニューのシェーバーで髭を全部剃るなどキメにキメた。決意を胸に東京に着き、行き先を確認するために御社からのメールを開いた。よく読んでみると入社式は明日だった。

予定では今日は入社手続きのみとなっており、ホテルでの入社式は明日である。自分の中のテンションが下がるのを感じながら、空港で割高な昼飯を食べた。ハヤシライスを頬張りながら、「嫁の料理の方が美味しい」と思っていた。



 2週間の研修と告げられていたので、家から運んだスーツケースは大変な重量となっていた。空港での荷物検査で判明したが、その重さは23㎏もあった。スーツケースに「heavy」のタグを付けられた。やかましいわ。

入社手続き会場まで長い坂道がある。病み上がりの両腕で、heavyなスーツケースを運ぶのは物凄く辛かった。正直入社手続きより辛かった。会場に入るときには息が上がっていた。



 手続き自体は簡単なもので、事前にメールで告知されていた書類の提出と、試用契約書への署名捺印だった。ただ、本社採用が150人近くいるので、卒業修了証明書などの確認にえらく時間がかかっていた。人事部が確認してる間は、ぼくら新入社員は地蔵の様に座っておくだけであり、リクルートスーツが多いのも相まってさながら通夜のようだった。

その後は入寮者説明会が催され、夕方に解放、寮へ移動した。寮は研修場所から遠く、立地の面では酷いが部屋は綺麗だった。7畳くらいのワンルームで、築年数は比較的少なそうな物件であった。説明会で「一般の方も住んでいる」と言われた時、「ガチガチの寮じゃなくて普通のマンションなのでは!?」と期待していたが、正にその通りだった。



 ついに東京に来たわけだが、気分は思っていたよりも落ち込んでいない。今日の内容が判子を押しただけな上、寮が綺麗だったからだろう。足は酷使し過ぎて棒のようになっているが。

新天地に来て、フワフワした気持ちになっているのが自分でもわかる。このドーピングがいつまで続くかわからないが、今しばらく上機嫌でいたい。オーロラ姫は王子様のキスで目覚めるわけだが、ぼくは多分上司のお叱りで目覚めるのだろう。庶民は辛い。