紆余曲折

いろいろあった。

分岐

 入社式の日まで、残すところ週末の土日の2日のみとなった。モラトリアムを名残惜しむ間もなく時は流れていく。今日も一日新生活の準備に追われていた。

配属先が決まっている大学の同期たちは、早々に住まいを決めて新天地での生活をスタートさせている。ぼくの内定先は住居は用意してくれるものの、入社式当日に案内するという仕組みである。そのため、現地で物を調達することができないので万全の準備をする必要がある。基本的にノープランで突き進んでいるので、この手のシステムは結構キツい。まぁ寮に入れてくれるだけ良心的だろう。

内定先の様々な待遇や福利厚生を妻に話すと、毎度感心される。妻は普通高校に通っていた。高校卒業後すぐに就職しており、馬車馬のように働かされたという。そういう経験もあって、娘には大学まで行ってほしいと事あるごとに言われている。

 

 高卒と大卒の違いで最も目に付くのは収入差であろう。男性においては、両者の平均年収は9000万ほど違う。多くの親が大学に行かせたがるのも納得がいく数字である。

妻が娘に大学に行ってほしいのはそれだけでなく、周りの人間の影響も大きい。ぼくと妻が、それぞれ通っていた高校の進研模試における偏差値の差は33である。そのため付き合う人間の種類は全く違っており、妻の友人の話を聞く度にぼくは驚かされている。

妻が正社員で働いていた時、フリーターの友人から「正社員の何がいいのかさっぱりわからない」と凄い剣幕で言われた話や、交際相手の財布からお金を抜き取って親が謝りに行った話、「派遣社員になって毎日が充実してる」とキラキラした顔で言われた数か月後にフリーターに戻った友人の話など毎回パンチの効いたエピソードが出てくる。

彼女が言うには友人の多くはフリーターであり、まともに働いている人はほとんどいないらしい。エピソードトークを披露した後、妻は毎回「高卒の末路よ」と笑っている。少し悲しげな顔をしながら。

高卒者の半分近くは3年で最初の職を辞めるらしい。「同い年の人が大学で遊んでる間に職業スキルが身につく」という言葉には疑問が多い。そもそも仕事を続けれる人が少ないではないか。小中学校のキャリア教育では、もっと正しい現実を見せるべきだとは思う。もっとも、消防士や介護職には先の言葉は当てはまる。これらの職を第一希望にしてる子供がどれだけいるかは知らないが。

 

 大卒者のメリットは収入云々よりも、職業選択の幅にあると思っている。入るところを間違えさえしなければ、希望の職に就ける。それほどまでに幅は広い。学校に来た求人に応募する高校の就活形式とは違うのだから。

妻は高卒者の苦労を知っている。そしてそれが人格にどう影響するのかも。娘の幸せを純粋に願った結果、進学を推しているのだろう。ぼくは正直どっちでもいいが、納得できる道を歩んでほしい。しかし一般的には、大学に行った方が選択肢は広がり、自分の進路に納得できる気がする。

人生は一度きりだから、進学するかしないかどちらがいいかは比較しようがない。ただ妻は高卒に難色を示し、ぼくは現状満足している。これが答えなのかもしれない。